6191:エボラブルアジアで試される株式市場の民度

航空券予約サイト「トリップスター」などを運営するエボラブルアジアが決算を発表した。売上高は前年同期比40.8%増の56億3400万円、営業利益は34.1%増の8億2900万円と大変良好な内容である。そして今期予想については、売上高が25.1%増の70億5000万円、営業利益にいたっては80.9%増の15億円という驚異的な増益見通しを公表した。

これだけ見れば、文句のつけようがない素晴らしい成長企業に映るだろう。しかし、今回の決算にはいくつかの"まやかし"が仕掛けられている。以前からこの企業のIR姿勢には疑問を持っていたが、ついにそれが決定的になったと見て記事化することにした。

まず最初に以下の2つの画像を見ていただこう。上が今回の着地の数字、下が1年前の決算短信で発表した業績予想である。

 

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おわかりいただけるだろうか。大幅な増収増益であることは事実であるものの、期初に発表した業績予想に対しては売上高で8.4%、営業利益では17.2%の未達となっているのだ。

期初に発表したEPSは35.66円、終値が2446円だから、今日の今日までエボラブルアジアはPER68.5倍という高いバリュエーションで取引されていたことになる。一般的にこれは業績予想はクリアして当たり前で、どれだけ上ブレできるかが期待されるような会社に付けられるPERであり、どれほど増益率が高かろうが未達という結果では許されない水準だというのは異論のないことだと思われる。

ところが、この会社はその点には全く触れないどころか、逆に下図のような説明をして何も問題がなかったかのような顔をしている。

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もしIFRSなら実質的に達成していた、などという言い訳を聞きたい投資家など誰もいない。聞きたいのはなぜ未達に終わったのか、それに対して今後どのような施策を打っていくのかということだけである。これまで高い成長性を売りにして来た会社が、都合の悪いことが起きると一切ケアをしないというのは非常に危険なサインであることは、経験豊かな投資家であればよくご存知のことだろう。

だが、この会社の行った"まやかし"はこれだけに留まらない。実はこの営業利益8億2900万円には、投資事業から得られた営業利益1億6700万円が含まれている。もしこの会社の本業がベンチャーキャピタルコンサルティングなどに類するものであったのなら全く問題はない。だが、エボラブルアジアはどこからどう見ても航空券予約サイトの運営を主力とする会社で、投資家もその成長性に期待をして高い株価を付けている。よって、今回の有価証券売却益は一時的な利益と見るのが妥当である。

もしそれがなかった場合にどうなっていたのかをわかりやすくするために、エボラブルアジアが上場してから2年間のセグメント別業績推移を四半期ごとにまとめた。

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17年に入ってから四半期で3億円以上出ていた本業の利益が、4Qで突如半減していることがわかる。ちなみに、この会社の4Qは7-9月であり、旅行業界では最も売上の立つ四半期となる。にも関わらず、売上高で見ても前年同期比で1.1%増にとどまり、3Qの43.5%増から急ブレーキがかかる結果となった。

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試しに関連企業の同四半期の実績を見てみよう。日本航空の7-9月の売上高は6.4%増で、天候不順などがあっても順調に伸びている。ANAは11.0%増となり、こちらは2桁の伸びを達成した。そして直接の競合となる航空券予約サイト「スカイチケット」を運営するアドベンチャーは、この時期に売上高を86.5%も伸ばしている。こうした予約サイトの価格を横断検索することができる旅行比較サイト「トラベルコ」を運営するオープンドアも、同期間の売上高は53.5%増であった。

要するにエボラブルアジアの圧倒的な一人負けなのだ。基本的にユーザーの認知度向上に合わせて右肩上がりで伸びていくネットサービスの会社にあって、四半期でこれほど急激に業績モメンタムが悪化するのはただごとではない。これは業績をミスした程度のことではなく、屋台骨にヒビが入ったことを疑わざるをえない大事故と言える。

最近同じような状況になった会社と言えば、料理動画アプリのクラシルに侵食されて四半期売上高が25.3%減、営業利益で78.5%減の衝撃的な決算を発表したクックパッドが思い起こされる。それなのに、会社の出した決算説明資料を見ると未達に関することは一切どこにも書かれておらず、ひたすら耳障りの良い話だけを書き連ねているのである。

これが投資家を重視したIRの姿勢と言えるのだろうか?アドベンチャーのとてつもない増収率を見れば、エボラブルアジアがシェアを奪われていることは想像に難くない。このまま無策でいれば次の四半期には減収に追い込まれてもおかしくないことは、まともな投資家が見れば一目瞭然の状況である。今会社が行うべきは、空虚な未来予想図を描くことではなく、足元の事業環境の急変に対してきちんと向き合うことではないのか。

だが恐らく、こうした声を投げかけたところで、エボラブルアジアの経営陣には決して届くことはないだろう。なぜなら、この会社は私が言っているようなことは百も承知で、敢えてこのようなIR姿勢を貫いているフシがあるからだ。

その疑念は、今年2月16日に出された「当社主要株主の株式売却について」と題された開示資料から浮かび上がってくる。

http://ke.kabupro.jp/tsp/20170216/140120170216401203.pdf

要は、会長と社長が市場で株式を売却した、その数量は発行済株式の9.2%であるということが書かれてある。実際にはブロックトレードで売却しているため市場への直接売却ではないが、引き受けた投資家がすぐに市場で転売したことは前後の値動きから明らかであり、実質的には市場で売却したのと変わりない。

それ自体は大したことではないのだが、問題はこの時の株価状況である。売却の約3ヶ月前、本決算においてエボラブルアジアは売上高53.7%増、営業利益61.9%増の野心的な業績予想を発表した。更に、ここから投資家の期待を煽るような事業提携などのIRを連発したことにより、株価は決算発表前の1500円前後から、株式売却が行われるまでの3ヶ月間で3900円まで急騰しているのである。

その株価過熱の最中に、発行済株式数の9.2%、金額ベースで約50億円もの利益確定が行われた。それから9ヶ月後、株価は1度もこの時の高値を上回ることなく次の決算を迎え、今回解説したように業績は大幅な未達に終わったのである。もちろんこれが意図されたものだと断定することはできない。事業には予想できない急変動が起こることもある。しかし結果的には、達成できない過大な業績予想によって作られた株価で創業者二名が大規模な株式売却を行ったことになった。

そして再びの今回の業績予想である。一過性の利益を除く賞味の営業利益が前年同期比で半減となった直近四半期の不振からすれば、営業利益が80.9%伸びるというこの予想の根拠はどこにもない。足元の状況から客観的に判断すれば、到底実現不可能な荒唐無稽な数字だと言わざるをえないのだが、前年の総括を行うこともなくこの会社はそれを発表してきた。

そうするインセンティブは今回もある。7月に総額101億円の新株予約権クレディ・スイス証券に対して発行しているからだ。この新株予約権は合計3本、行使価額はそれぞれ3500円、4500円、6000円となっているが、2018年1月25日以降は下限2918円に修正することが可能となっている。現在の株価は2446円なので、なんとかしてこの行使価額まで株価を持ち上げたいというインセンティブは確かに存在するのだ。

本業の行き詰まりを察してかどうかは不明だが、エボラブルアジアは決算発表に先立つ2ヶ月間で2件の買収を行っている。このうちの1つはメールマガジン運営のまぐまぐで、取得価格は8億円。オンラインサロンに加えてVALUも盛り上がる中、いかにも旧世代のビジネスという印象が拭えないまぐまぐの売上高は4億7000万円、営業利益は5500万円で、買収価格が安かったようには思えない。

こうした出費も影響してか、前期のフリーキャッシュフローは10億9600万円のマイナスとなり、有利子負債は10億6000万円の増。自己資本比率は47.0%から37.7%に悪化した。財務状況を鑑みれば、是が非でも市場から資金を調達したいところであろう。

ところで、この決算発表を受けてPTSは大幅高になるかと思いきや、+1.10%の小幅高で取引を終えている。出来高も1100株と全く盛り上がっていない。実のところ、今回このようなタイトル付けをしたのにはわけがある。

新興市場に詳しい投資家なら、この程度のことは日本市場では日常茶飯事的に行われていると思うかもしれない。確かに、これがトレイダーズやnuts、あるいは現在進行形で話題を集めているウェッジの発表した資料であれば、私もわざわざ貴重な時間を費やしてまで記事にしようなどとは思わない。そういう銘柄に集まっているのは最初から愚かな投機家ばかりであり、バカにバカと言ったところで何にもならないことはわかりきっている。

その点、エボラブルアジアはIR姿勢が鼻につくものの、途中までの業績の出方はまさしくグロース企業のそれであった。だから、株価水準がオーバーシュートしているのではないかという議論を別にすれば、それを買う投資家がいても不思議ではなかった。

で、あるならば、である。そういう評価を受けていたグロース企業がこれほどのネガティブサプライズを発表すれば、通常なら即座にストップ安に張り付いてもおかしくはない。それを、一過性の利益と実現性のない業績予想という2つの"まやかし"によって覆い隠した時に、市場はこの会社に対してどのような評価を下すのか。

 

これはまさしく市場の方が民度を試されている案件というほかにないのである。

4597:ソレイジアファーマのSP-03エピシルは「薬」ではない

ソレイジアファーマに関する前回の記事では、JapanBridgeの大量売却による影響について客観的な分析を記したが、株価はその通りに大幅下落した。発表日の引け値が483円、翌日の始値が446円であるから、大幅GDとはいえ成り行きで売れば10%未満の下落で済んだということになる。その日の終値が411円、その後更に下落を続けて今日の安値は332円となっていたわけだから、悪材料が出た最初の寄り付きからたった5営業日で25%も株価が続落したということだ。いかに参加者が楽観的であったか、あるいは現実と向き合うことを拒否したかがわかる値動きだったと言えよう。

ところが、本日の昼休み中に、申請中だった開発品SP-03「エピシル」の製造販売承認を取得したとのプレスリリースが発表され、後場は一転して寄らずのストップ高買い気配となった。今回はこのエピシルに関する見解と、ソレイジアファーマの今後についての予測を示すことにする。

まず結論から言うと、タイトルにもあるようにこのエピシルは薬ではない。以下に、ソレイジアファーマによるエピシルについての説明を引用する。

エピシルはCamurus ABの特許技術であるFluidCrystal®を用いて開発された脂質ベースの液体であり、口腔内に適用されると口腔粘膜を覆う強固な生体接着保護膜を形成し、患部を物理的に保護します。臨床試験の結果、適用後数分以内に口腔内の疼痛を緩和し、その効果は8時間程度持続することが示されています。

このように、エピシルは患部を液体(一部メディアの過去記事ではゲルとの表現もある)で物理的に保護することによって痛みを和らげるもので、何らかの薬効によって口内炎そのものに作用するわけではない。そのため、プレスリリースでも「医療機器製造販売承認取得」となっているのである。雰囲気でトレードしているホルダーの中には、これが何かがん治療における画期的な薬であるかのような錯誤をしているように見受けられる者もいるが、その点は明確に誤りである。

また、上記引用にもある通り、エピシルはスウェーデンのCamurus ABから導入した製品であり、その販売権はMeijiSeikaファルマに再導出されている。通常の創薬ビジネスにおける開発元のロイヤリティが10%前後、低いものでは数%とされていることから、再導出モデルのエピシルから得られるロイヤリティは1桁%の前半と推定される。その場合、仮に販売額ベースでの売上規模が100億円に達したとしても、ソレイジアに落ちる売上は数億円に過ぎず、現状の固定費を吸収できるレベルにはならない。

ちなみに、エピシルはイギリスでは69ポンド(約10,143円)、カナダでは89カナダドル(約7,855円)で販売されていることが確認できる。1ヶ月あたりの薬価が100万円前後になる抗がん剤とは比べるべくもない安価である。日本での価格がいくらになるかは現時点では不明だが、もしイギリス並みの1万円であった場合、100億円を売り上げようとすると、このスプレーが国内で年間100万本売れなければならないことになる。あくまでも抗がん剤治療の副作用に処方される製品で、しかも薬品ではなくスプレーであるエピシルがそれほど多く販売されるような未来を私は想像することができない。もし実際の販売額が10億円程度にとどまれば、ソレイジアの手取りは数千万円程度にしかならないという可能性も十分にあるだろう。

イギリス:https://www.clearchemist.co.uk/episil-oral-spray-10ml-72dose.html
カナダ:https://qbcpharmacy.com/products/663220001501?variant=1239101887

まとめると以下のようになる。

①エピシルは薬効を持たない医療機器である
②エピシルはCamurusからの導入品で、ソレイジア自体は開発を行っていない(ロイヤリティ料率が低い)
③エピシルの価格は1万円前後になる可能性が高い

これらを総合すると、このSP-03エピシルの製造販売承認がソレイジアの企業価値を1日にして23.3%、時価総額にして70億円も押し上げるほどの材料だとは考えられないというのが私の見解である。

参考までに、過去に承認で相場を作った銘柄のその後を紹介しておきたい。4576のデ・ウエスタン・セラピテクス研究所(DWTI)は、2009年に上場してから2年間に渡って売上がゼロだった会社として有名だったが、長い我慢の月日を経て2014年にとうとう「緑内障・高眼圧治療薬グラナテック」の製造販売承認を取得した。当時K-115という名が付いていたグラナテックは世界初の作用機序を有する自社開発品として大いに市場の期待を集め、株価は2年前の100円台から最高で3550円、時価総額にして800億円への大暴騰を演じることとなった。

それから2年以上が経ち、その結末がどうなったのかを我々は最新の決算資料で知ることができる。グラナテックの販売がフル寄与している2016年12月期の売上高は1.68億円、営業損失は3.19億円。新製品のマイルストーン収入を除く定常的な売上高は四半期で0.28億円程度で、これがグラナテックから得られるロイヤリティだと推定できる。つまり、時価総額を800億円まで押し上げた新薬が実際に生み出した収益は年間1億円強ほどで、その程度では固定費が賄えず赤字が続いているのである。

2017年現在、DWTIは事業継続のためにファイナンスを行った影響で、発行済株式はグラナテックの発売前に比べて15.3%増加している。2009年の上場から8年の歳月が過ぎ、売上ゼロでの赤字上場を認められる根拠となった開発品が成功してもなお、年間たった1億円の売上高しか得られず、希薄化分で株主価値は毀損している。創薬は成功するかどうかが大事なのではなく、それがどの程度の市場規模を持つ開発品なのかが重要だということである。大当たりの入っていないくじをいくら引いたところで金持ちにはなれないというわけで、それはソレイジアにも同じことが言えよう。

さて、ソレイジアは今回のプレスリリース上で当期業績予想への影響はないと開示している。それについては、上場時に公表した業績予想の前提条件を参照することで理解可能となる。以下にその部分を引用する。

(2)個別の前提条件
① 売上収益
当社グループの売上収益は、現状、各開発品の販売権等の導出に基づく契約金収入や開発の一定の進捗を契機として受領するマイルストン収入が大部分を占めており、これら契約に基づく収益は、各開発品の進捗状況及び今後の予測に基づいて計画を策定しております。2017年12月期においては、SP-01の中国当局による承認及びSP-03の日本当局による承認を得られることを前提としており、SP-01の承認後に導出先Lee's Pharmaceutical(HK) Limited及びSP-03の承認後に導出先Meiji Seika ファルマ株式会社から、それぞれ受領するマイルストン収入を計画しております。これら計画により、当期の売上収益は423百万円を見込んでおります。

このように、上場前の時点で今期中にSP-01及びSP-03が承認されることを織り込んで計画を出している。当然、この前提条件を踏まえて185円という公開価格が設定されているし、ホルダーもそれをわかっていて承認が来れば株価は上がる!と考えて投資をしていた。

だが少し待って貰いたい。予め会社の業績予想に織り込まれている事象が現実になったからと言って、改めて株価がストップ高するのはおかしいのではないだろうか?SP-01にしてもSP-03にしても、欧米を含む複数の地域で既に承認、販売されているものを日本に持ってきたに過ぎない。基礎研究から候補物質を見つけ出し、薬効や副作用の確認を10年以上をかけて行う通常の創薬ではなく、既に効果や安全性が立証されているものを導入するだけなのだから、承認されるのは時間の問題なのである。

もし実際に販売された時に巨額の利益をもたらすようなものだと期待されているならば、公募売り出しを行う発行体サイドも、公開価格で株を引き受けたい機関投資家サイドもこんな低い価格ではIPOをさせなかったはずだ。投資家から見た公開価格は安ければ安いほど良いというのは間違いで、本当に良い株なら値段を上げてでもなるべく多くの玉を引き受けたいと考えるので、フェアバリューまで株価が引き上げられることになる。そうならなかったのは、販売されても大した売上規模にはならないことを見切られていたからだ。

また、JapanBridgeがロックアップ解除と同時に発行済株式の25.06%というとてつもない数量の株をブロックトレードまで使って処分したのには、市場に承認期待があるうちに速やかに利食いしてしまいたいという考えがあったように思える。公募売り出しの数量が2235万株、JapanBridgeが追加で売却した分が2105万株だから浮動株がほぼ倍になった計算となるわけで、遠い未来のことはともかく、2つの開発品が世に出たところで中期的な業績への寄与は限定的であることが明らかになるにつれて、この膨大な浮動株の重みに耐えきれず過剰な期待を背負った株価は崩壊に向かうと考えられる。

その根拠は時価総額で説明が可能だ。ソレイジアの時価総額は本日終値423円で370億円。PTSでついている500円となれば、438億円まで増加する。一方、昨年大相場を演じたそーせいの時価総額は2032億円である。

そーせいと言えば、2015年以来、アストラゼネカ、リジェネロン、テバ、カイマブ、ファイザー、アラガンといった錚々たる海外メガファーマとの提携を立て続けに結び、契約一時金として合計1.45億ドル(約160億円)、開発/販売マイルストーンで最大34億ドル(約3740億円)という巨額のディールを成功させた。特にアラガンとの契約は一時金で1.25億ドル、開発マイルストーンだけで6.65億ドルというとてつもない金額であり、これは間違いなく日本の創薬ベンチャーにおける最大の成功例と言える。

こうした華々しい成果が注目され、今では国内外の多数のセルサイドがレポートを発行、世界中の投資家に認知される存在となるに至った。前期はアラガンとの契約もあり営業利益123億円を達成し、今期も会社予想は非公表ながら数十億円レベルの黒字が予想されている。そーせいは創薬プラットフォームの会社なので、今後も新たな提携などが飛び出してくる可能性はあるだろう。そんな会社の時価総額が2032億円にとどまっているのである。

それに比べてソレイジアはどうか。SP-01とSP-03は共に自社開発ではない導入品で、固有の技術は有していない。今回、この2品目の承認マイルストーンを織り込んだ売上高が4.23億円。そーせいとは桁が2つ違いなんとも寂しい限りである。そんな会社が今日時点で370億円もの時価総額を持ち、週明けにもそれが438億円になろうとしているのだ。これを異常事態と言わずしてなんというのだろうか。

もちろんDWTIのように、結果的にほとんど業績に貢献しなかった開発品であっても承認相場で800億円まで上昇したわけだから、それが2品目でしかも中国もあるとなれば400億円程度では終わるはずがない、という考え方もあるだろう。だが、企業価値すなわち時価総額というものは、最後はファンダメンタルズ=業績に収斂していくものである。どのように巧妙に買い煽ろうとも、開発品の内容をよく見ればこれほどの時価総額を正当化するほどの実力ではないことは明らかだ。

そして私が何よりも嫌悪しているのは、ここで解説したようなことを百も承知の上で、積極的に買い煽って短期的に相場を作り、初心者を食い物にしているような連中である。無知な者が承認というだけで株価が上がるものだと思いこむのは仕方ない。それは誰もが一度は通る道で、そこから気付きを得られるかどうかが本物の投資家になるための第一歩となる。

しかし、そこに付け込もうとする輩の存在を私は断じて許したくはない。ましてや、それこそが相場巧者でありこの世界の実力だという考え方には絶対に与しない。だから、誰が読むともしれないこのような長文を一人書き記しているのである。

真のファンダメンタルズ信奉者ならば、誤った価格形成は割安方向だけではなく割高方向でも是正されるべきだと考えるはずだろう。一刻も早く市場が自らの愚かさに気付き、本来評価されるべき企業に資金が向けられることを願うばかりである。

4597:ソレイジアファーマの騒動

3月24日に公開価格185円で上場。JapanBridge提出の大量保有報告書には、6月21日までがロックアップと記載。1.5倍以上であれば売れるはずだが、なぜ律儀に90日間動かなかったのかは不明。

しかし、結果的に株価は公開価格の3倍以上で推移。6月21日を迎えるや、即座に3.03%を市場内で処分。21日を含めて4日連続で合計6%以上を処分したところで、野村證券へ850万株、9.7%の売却を公表。

ソレイジアのプレスリリースには、

2. 異動予定年月日 2017年7月3日 (株式振替手続完了予定日)

と書いてある。一見すると7月3日に譲渡が実行されるようにも見えるが、野村證券側のプレスリリースでは

当社の子会社である野村證券株式会社(代表執行役社長:森田敏夫)は、取得後直ちに転売する 目的で下記のとおり株式を取得しました。

このように、既に取得したとのニュアンスで書かれている。すなわち、ソレイジア側に記載された7月3日と言うのは、()内に注目すれば受け渡し日のことを指しており、既に株式は譲渡完了していると考えるのが妥当だろう。さもなくば、このような発表をしたことで先回り売りによる暴落が起きるのは明白なのに、タイムラグを付けて事前に予告することなど考えられない。

また、この転売先が有力な事業会社なのではないか(一部では、協和発酵キリンによる買い増しだなどと言うかなり悪質な推測がなされている)との期待もあるようだが、3ヶ月前に185円でIPOした会社の株を、特に画期的な事業の進展がないにも関わらず、その3倍弱の値段で買うような主体がいるはずもない。

ここで野村のブロックトレードを使ったのにも理由がある。最初の変更報告書の提出期限が6月28日なので、それまでは市場参加者に気付かれないように場で高値での売却を密かに進め、最後にまとまった数量を、値を下げてでも一気に処分しようということなのだろう。

この株は伊藤忠とJapanBridgeで発行済み株式の52%を占めており、バイオベンチャーにしては特定株が多く需給妙味があり、なおかつ公開価格時点では185円という低位だったことが人気化の理由だった。初期からの大株主が大量に売却するということは、この株価は高いと言っているようなものであり、その結果として浮動株が大幅に増加したとなれば、人気離散は確実なものとなる。そこまでわかった上で、ブロックを使って大量に売りさばいているのである。私の予想では、このブロックの株価は終値から10%前後のディスカウントがなされていると見る。

ソレイジアは現在、発行済株式の15%もの大量の信用買い残を抱えている。先週に162.9万株も急増したのは、裏側で大株主が売却していたからである。そこに、野村のブロックによる9.7%の玉が容赦なく降り注いでくることになれば、高値で出来た大量の信用買い残が重しとなり、悲惨なチャートを形成することは容易に想像がつく。

繰り返しになるが、この株は基本的にIPO直後の需給妙味で上がってきた株で、マネーゲームの受け皿としての側面が非常に強かった。こうなると、承認だのなんだのと言った所で需給の大逆流には逆らえない。今後も買い煽りが様々な美辞麗句を弄してこの銘柄を取り上げてくることだろうが、この記事を最後まで読むだけの知性をお持ちの読者諸兄には、当面近づいてはならない銘柄であると警告しておきたい。